’んじゃあ、正気かどうかの区別がつくってーんだな?’
徘徊老人に出くわしたんですよ。
正確には、徘徊老人の世話を押し付けられたおっさんに、だけど。
俺携帯持ってないから警察呼んで、って声かけられて。
家は橋の近くじゃった、とかつぶやいて隙あらばふらふら歩き出す爺さん。
正直目が離せねえ。そして警察がぜんぜんこねえ。や警糞。
なんで、爺さん携帯持ってたから家族に電話した。携帯マジ便利。
電話帳で家族これだわ、って確認とったのちコール。
「突然すみません。おじいさんが散歩中に家を見失ったようで」
と告げ、迎えに来てもらえませんかと俺要請。
ええっと驚く親族の人。まあ驚くわなあ。
でも、そこじゃなかったんだよ。
「おじいちゃん、九州から来たの!?」
到着した警察が身元確認のため、財布調べて開口一番そう言った。
あのー、ここ愛知県なんだけど・・・。
「だめだよー何も言わずに飛び出してきちゃあ」
九州から出るときもまわりに何も言わなかったらしい。
痴呆だな、という体で爺さんはあしらわれ、家族に引き取られた。
しかしここにきて俺は思う。
・・・そうなのか?
ともあれ、爺さんは家まで歩いて10分くらいのとこまで来ていたのだ。
九州を出て愛知まで来た上で、である。
頭はそれなりにさえているだろう。
・・・行動が突発的過ぎたからか?
家族に会いたいと思うのは自然だろう、確かに事前連絡してないのだが。
・・・行動の理由を自分で説明できなかったからか?
なるほど。
・・・一人で目的をなしえなかったからか?
なるほど。
それが境目なのだとしたら、
正気って案外難しい、よな。
それが境目じゃないのだとしたら、
じゃあ。
難しく考えすぎか?
単純に年寄りだからそう見られてしまうだけなのか?
老人はそういうものだと。
家がわからないと老人が道を尋ねれば、それはすなわち痴呆なのだと。
散歩途中で迷子になったのだと。
事実、われわれもその考えに陥っていた。
だが――すべてを「老い」に委ねて良いのか?
私たちとは違うカテゴリにすべてを押し付けて安全圏に避難することはたやすい。
しかし老いはおおむね万人に、やがて訪れる境遇なのだ。
爺さんは何も言わない。自分からは何も語らなかった。
やめられんなあ、とたばこの煙を吐くばかりであった。
徘徊老人に出くわしたんですよ。
正確には、徘徊老人の世話を押し付けられたおっさんに、だけど。
俺携帯持ってないから警察呼んで、って声かけられて。
家は橋の近くじゃった、とかつぶやいて隙あらばふらふら歩き出す爺さん。
正直目が離せねえ。そして警察がぜんぜんこねえ。や警糞。
なんで、爺さん携帯持ってたから家族に電話した。携帯マジ便利。
電話帳で家族これだわ、って確認とったのちコール。
「突然すみません。おじいさんが散歩中に家を見失ったようで」
と告げ、迎えに来てもらえませんかと俺要請。
ええっと驚く親族の人。まあ驚くわなあ。
でも、そこじゃなかったんだよ。
「おじいちゃん、九州から来たの!?」
到着した警察が身元確認のため、財布調べて開口一番そう言った。
あのー、ここ愛知県なんだけど・・・。
「だめだよー何も言わずに飛び出してきちゃあ」
九州から出るときもまわりに何も言わなかったらしい。
痴呆だな、という体で爺さんはあしらわれ、家族に引き取られた。
しかしここにきて俺は思う。
・・・そうなのか?
ともあれ、爺さんは家まで歩いて10分くらいのとこまで来ていたのだ。
九州を出て愛知まで来た上で、である。
頭はそれなりにさえているだろう。
・・・行動が突発的過ぎたからか?
家族に会いたいと思うのは自然だろう、確かに事前連絡してないのだが。
・・・行動の理由を自分で説明できなかったからか?
なるほど。
・・・一人で目的をなしえなかったからか?
なるほど。
それが境目なのだとしたら、
正気って案外難しい、よな。
それが境目じゃないのだとしたら、
じゃあ。
難しく考えすぎか?
単純に年寄りだからそう見られてしまうだけなのか?
老人はそういうものだと。
家がわからないと老人が道を尋ねれば、それはすなわち痴呆なのだと。
散歩途中で迷子になったのだと。
事実、われわれもその考えに陥っていた。
だが――すべてを「老い」に委ねて良いのか?
私たちとは違うカテゴリにすべてを押し付けて安全圏に避難することはたやすい。
しかし老いはおおむね万人に、やがて訪れる境遇なのだ。
爺さんは何も言わない。自分からは何も語らなかった。
やめられんなあ、とたばこの煙を吐くばかりであった。
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